あなたは大丈夫?“呼吸の仕方”が健康に及ぼす悪影響

なんとなく日々を過ごす中で、自分の「呼吸の仕方」を意識したことはありますか?
実は、呼吸の方法ひとつで、健康状態や美容、さらには虫歯や歯並びにまで影響を及ぼすことがあるのです。

この記事では、「正しい呼吸=鼻呼吸」がなぜ大切なのか、そして逆に「口呼吸」が私たちの体にどんな悪影響をもたらすのかを、わかりやすくご紹介します。

間違った呼吸法である「口呼吸」になっていませんか?

まずは、あなたの呼吸が口呼吸かどうか、簡単にチェックしてみましょう。

  • 日中、口がぽかんと開いていることがある
  • 寝ているときにいびきをかく、口が乾いている
  • 朝起きたときに喉がイガイガする
  • 唇が乾燥しやすい
  • 風邪をひきやすい
  • 歯並びが悪い、もしくは悪くなってきた気がする

いくつか当てはまった方は、口呼吸になっている可能性があります。

口呼吸の原因

【口呼吸の原因】

  • 口の周りの筋肉の衰え(軟らかい食事が増えたことによる咀嚼数の減少)
  • アレルギー疾患による鼻づまり(花粉症、アレルギー性鼻炎など)
  • 歯並び(出っ歯や顎の発達不全などにより、口を閉じにくくなる)
  • 猫背の姿勢(肺への空気の通り道が狭くなり、浅く小刻みな口呼吸になりやすい)

など様々な原因が挙げられます。これら一つずつというわけでなく、複数の原因が絡み合っている場合もあります。その他にも、急激な温度変化、激しい運動、就寝中のいびきなども原因になります。携帯ゲーム機やスマートフォンの操作に集中している時も口呼吸になりがちなため注意が必要です。

正しい呼吸である“鼻呼吸”と口呼吸の違い

鼻呼吸は、鼻毛や鼻腔粘膜がフィルターとなり、ウイルスや花粉やホコリ等の異物が体内へ侵入するのを防いでくれます。また、冷たい空気は鼻を通るときに温められ湿度も加わり、喉や肺への刺激を少なくしてくれています。 一方で口呼吸は、冷たく乾いた異物だらけの空気がそのまま体内に入り込むため、口内は乾燥し、病原体が繁殖しやすい状態になります。

口呼吸は慢性扁桃炎の原因のひと

人間の鼻と口の奥には、ワルダイエルのリンパ輪(のどの奥にある上咽頭、中咽頭に位置する扁桃の総称)といって外敵から体を守るリンパ組織が備わっていますが、口呼吸によってここに絶えず炎症が起こると免疫異常が引き起こされて慢性扁桃炎を引き起こします。特に扁桃腺は、リンパ組織であり、免疫応答に関与しているため、慢性的な炎症があると全身の免疫バランスに影響を与えます。

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)にも関係している

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)は、手のひらや足のうらに、うみをもった小さな水ぶくれ(膿疱のうほう)が繰り返しできる皮膚炎です。この病気が引き起こされる原因の一つとして扁桃腺から発せられる慢性の刺激(免疫系への負荷)が、皮膚症状を引き起こしていると考えられています。このように、体の一部に慢性的な炎症があり、それが原因で他の臓器に障害を起こすことを病巣感染といいます。口呼吸によって引き起こされる慢性扁桃炎がこの「掌蹠膿疱症」の誘発や悪化に関係しています。

「口呼吸」がもたらす悪影響とは?

●虫歯・歯周病のリスク増加

口呼吸により口の中が乾燥すると、唾液の自浄作用が弱まって細菌が繁殖しやすくなり、虫歯や歯周病の原因となる細菌の温床であるプラークも乾燥しやすくなります。乾燥したプラークは、歯に強くこびりついてしまいます。その結果、歯磨きをしてもプラークが取れにくくなり、プラークコントロールも悪化します。

●口臭のリスク増加

口臭の原因はさまざまですが、口呼吸によって口内が乾燥すると、唾液の分泌量が減り、唾液がもっている口の中を洗浄・自浄する作用が低下します。その結果、口臭の原因となる細菌が増殖しやすくなります。

●歯並びの影響

私たちの歯並びは、舌が内側から押し出す力と、唇や頬が外側から押さえ込む力のバランスの上に成り立っています。口呼吸を続けていると、唇が外側から押さえる力が弱くなってしまいます。このため、舌が内側から押し出す力が強くなることで、前歯が出っ歯になってしまいます。

●顔立ちへの影響

口呼吸の方は、口の周りの筋肉の働きが弱くなっていることが多いです。唇や頬がたるみ、表情が乏しくなります。口が半開きになったままになり、口元の印象もだらしなくなります。口呼吸は、顔つきにも悪い影響を及ぼします。

●全身の健康への影響

鼻呼吸に比べて口呼吸は酸素の取り込みが不十分になりやすく、慢性的な疲労感や集中力の低下、睡眠の質の低下を引き起こすこともあります。また、鼻呼吸では、鼻毛や粘膜が空気中のウイルスや細菌、ホコリをろ過してくれます。しかし、口呼吸ではそれができず、異物が直接のどや肺に侵入しやすくなります。そのため、風邪やインフルエンザ、のどの炎症などにかかりやすくなります。

口呼吸を改善するためにできること

●あいうべ体操

口呼吸をしている方は、舌が下がっている、すなわち舌の筋肉が緩んでいる状態になっています。そこで、「あいうべ体操」で舌の筋肉を鍛えて、舌を上げるようにしましょう。

「あ」で、と口を縦に大きく開きます。
「い」は、口を横にしっかりと開きます。
「う」は、唇を前に突き出します。
「べ」は、舌を前に出し下に下げる。

食前に10回行いましょう。食前に行うと唾液の分泌を促しますので、食べたものの消化が良くなりますので、タイミングとしては食前がおすすめです。これを続ければ、舌の筋肉が再び強くなり、口呼吸をしにくくなります。

●鼻づまりを改善する呼吸法

鼻づまりが原因で口呼吸になってしまっている場合は、まず呼吸法によって鼻づまりを改善しましょう。この呼吸法は1〜5までのステップがあります。

1. 深呼吸:2〜3回ゆっくり深呼吸します。しっかりと息を吸って、息を吐ききったところで2に移ります。

2. 鼻をつまむ:息を吐ききった状態で鼻をつまみます。

3. そのまま室内を歩き回る:息が苦しくなるまでそのまま歩き回ります。80歩位を目安にしますが、無理はしないようにしましょう。

4. 息がしたくなったら立ち止まり鼻をつまんでいた指をはなす:息がしたくなったところで立ち止まります。口が閉じていることを確認してから、鼻をつまんでいた指をはなします。

5. 鼻からゆっくり息を吸う:身体の力を抜いて、自然に鼻で呼吸しましょう。

※この1〜5までの動作を5回繰り返します。

●ガムトレーニング

ガムを使った鼻呼吸のトレーニングを紹介します。ガムを噛みながら繰り返して行うことで、物を噛む力や舌圧を上げることが期待されます。

1. ガムを左右の歯で噛む:ガムを口の中に入れて左右の歯で噛みます。左右どちらかが噛みにくいときは、噛みにくい方で多めに噛んでみましょう。

2. 舌の上でガムを丸める:噛んでいるガムを舌の上で丸めます。最初はやりにくいかもしれませんが、舌を使ってうまく丸められるようになると、舌の動きが良くなってきています。

3. ガムを上顎に押しつける:舌の上にガムを乗せて、上顎の中央にぎゅっと押しつけて上顎にガムをくっつけます。舌を動かして押し付けたガムが円形になるように薄く広げてください。押し付けるのは1回だけで3秒程度で大丈夫です。

4. 1〜3を一日10回程度行います。

まとめ

私たちが毎日無意識に行っている「呼吸」には、思った以上に大きな影響力があります。口呼吸を続けていると、見た目の印象から体の不調まで、さまざまなリスクが高まります。しかし逆に言えば、鼻呼吸に戻すことは、誰にでも今からできる“健康投資”でもあるのです。

もし「自分は口呼吸かも」と感じた方は、まずは意識的に「鼻呼吸」をすることから始めましょう。そして、今回ご紹介した口呼吸を治すための方法もぜひ試してみてください。アレルギー疾患による鼻づまりが原因で口呼吸になっている場合は、耳鼻科などの専門医に一度相談することをお勧めします。

記事監修 Dr.鳥居 健二
鳥居おとな・こども歯科クリニック
院長 鳥居 健二

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